人類働態学会
The Human Ergology Society
第34回大会ホームページ
[ 研究発表・講演抄録集・写真アルバム ]
開催期日:1999年6月26日・27日 開催校:職業能力開発総合大学校
大会の様子を写真集を中心に掲示しました。
・・・・ 参加された皆さん、会員の方にはオリジナル写真をメールで送付できます。お好きな写真を注文ください。
オリジナル写真は解像度が高くなっています。枚数が多いと、メールは重くなりますのでご留意ください。
予定したホームページサービスはこの号で終了させていただきます。次期大会でお会いします。
[ 99/07/06 更新 ]
人類働態学会第34回大会実行委員会
229-1196 神奈川県相模原市橋本台4-1-1 職業能力開発総合大学校 指導学科研究室内
(写真1)
*これがメイン会場・・・・・ といっても、1つの会場で全てを進めるのはとても働態学的!!。
(写真2)
*受付に入ると笑顔がお出迎え、中には情報コーナーも設置されている。 会場ではコンピュータによる演題提示ですすめられている。
アルバイトの学生諸君いわく、「とても楽しい学会なのですね」、「研究発表もとても興味がある内容でした」
働態学的ティーブレイクのすすめ!!
(写真3)
(写真4)
*これが働態学的ティーブレイクなのか・・・・・ その正体を見て感激!!。
ハイビスカスティーやオレンジティー、ワインなどが出てまた感激・・・。 BGMも流れて・・。
大会特別企画フォーラム「若者に未来をまかせる」
(写真5)
*若者と年輩世代のメッセージの交換をどう進めるか・・・・どう未来をまかせるのか、どのように受けとめるかを提示しながら進行した。
はじめの講演・司会進行 森 清 氏(山野美容芸術短期大学)
*中小企業論、技術・技能論、若者論を中心に活動。軽快な切り口で若者からのメッセージを引き出す。
話題提供者 吉永 貴志 氏(都立江戸川技術専門校生)「職業の中で生きるとは・・」
*フレンチレストランの調理師から自動車整備技術科に学ぶ・・・
話題提供者 寺田さおり 氏(特別養護老人ホーム「緑の郷」生活室)「お年寄りとの交流の中で・・」
*老人ホームで毎日、明るくお年よりの介護にあたる。・・・
若手研究者のつどい 「働態学会の活性化と私−学会とのかかわりの中から」
(写真6)
*働態学の未来についての見解と数々の提案が学会の将来を約束している・・・・若手研究者の率直な想いが会場の人々の心をゆさぶる。司会進行 久宗周二(海上労働科学研究所)
話題提供者 出浦淑枝(コマツ)、松村秋芳(防衛医大)、池上 徹(千葉工大大学院)
フォーラム 「働態学を生かす−学会とのかかわりの中から」
(写真7)
*大詰めのフォーラムはこの大会を象徴するテーマでもある。これから我々はどこへ、どう進めていくか・・・・その方向が示される。
司会進行 岡田 明(大阪市立大学)
話題提供者 中田英雄(筑波大学)、片岡洵子(日本女子体育短期大学)、川上 剛(労働科学研究所)
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大会特別企画 「大会速報」
情報は大会速報から得よう。・・・・・ 定期的に確実に出すのが速報の使命原稿作成のため研究発表が聞けないのはとても残念。発刊を完了してホッと・・。
第2号「第34回大会案内号・こひるの道特集・キャンパスガイド」 6月26日午前9時発刊
第3号「第34回大会始まる・次期大会開催校決まる」 6月26日午後3時発刊
第4号「大会特別企画フォーラム「若者に未来をまかせる」特集号」 6月27日午前9時発刊
第5号「若手研究者のつどい特集号」 6月27日午後3時発刊
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第1日 (6月26日 土曜日)
研究発表A (14:10-15:30) 座長 岡田 明(大阪市立大学)
1-6 疲労の初期徴候と副次動作の発現 ○川上 剛(労働科学研究所),大西 明宏(日本体育大学),松ケ迫 剛,瀬尾 尚聡(千葉工業大学大学院)1-8 幼児の可愛らしさの形態学的研究 ○佐藤 陽彦,宮野 綾子(九州芸術工科大学)
1-9 パソコンソフトの日本語メニューで用いられる用語について ○松延 拓生,吉村 健志,小田 雄一,佐藤 陽彦(九州芸術工科大学)
(写真8)
(写真9)
第2日 (6月27日 日曜日)
研究発表B (9:00-10:40) 座長 佐藤 陽彦(九州芸術工科大学)
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研究発表 講演抄録集1-1 幼児の成長の地域差と時代変化 ○熊倉 千代子,平塚 真紀子,芦澤 玖美(大妻女子大学)
われわれは 1994 年に東京都千代田区内の保育園で幼児の身体測定を行った。これら幼児のデータを諏訪と立花が作成した
1990 年の厚生省の身長,体重の標準成長曲線にのせると、平均値±1SD
内にあることが分かった。また、通産省工業技術院の
1978-81 年の全国調査データをもとにわれわれが作成したパーセンタイル値成長曲線とこれら幼児の成長の比較を行ったところ、多くの測定項目が
50-75 パーセンタイルであった。さらに幼児の成長の地域差をみるために
1981 年測定の埼玉県の資料、時代変化をみるために
1950 年測定の首都圏の資料を用い比較、検討した。
1-2 産褥期母親の夜間睡眠中の覚醒と子供の概日リズム形成との関係 ○西原
京子(東京都精神医学総合研究所),堀内 成子(聖路加看護大学)
産褥期の母親は、子供への授乳等のために夜間に起きざるをえない。夜間の覚醒がどのように変化をするかを子供の睡眠・覚醒概日リズムの形成の過程から検討した。被験者は、初産婦7名(平均年齢27.6才)と彼女らの子供である。出産3、6、9、12週に連続3日間のActigraphを母子に対して同時に行った。その結果、子供の睡眠・覚醒概日リズムは、3週には認められないが、6週からリズムを示すものがあり、12週には全員がリズムを形成していた。母親の夜間睡眠中のActivityは、3週から12週にかけて有意に減少していた。母親の夜間の覚醒は、子供の睡眠・覚醒概日リズムの形成と関係する。
1-3 家事に対する意識調査−職業としての家事− ○神部
順子(お茶の水女子大学大学院),長嶋 雲兵(通産省工業技術院産業技術融合領域研究所)
介護福祉士の資格取得を目指す専門学校生31名に、その業務としての家事援助項目についての価値観を、アンケート調査に基づくSD法と因子分析によって調査した。また、介護に関する意識調査を行なった。家事援助内容についての価値観についての回答結果は、第1回目の実習前であることも影響していると考えられるが、どの問に対しても学生達は前向きに取り組んでいこうとする姿勢がみられる。問い毎の傾向に大きな差異はみられなかった。問いの設定や現場で実際に働いている人にとっての家事援助に対する意識を聞く必要があることなどの課題がいくつか残った。
1-4幼稚園教諭と保育士(保母)の労働負担について 金城 悟(東京成徳短期大学)
わが国において就学前の幼児教育は、幼稚園と保育所で主に実施されている。幼稚園と保育所に勤務する保育者の労働負担を把握することを目的として勤務条件や自覚的疲労を測定する項目(自覚症状しらべ、CFSI)、ストレスに関する項目、社会的支援に関する項目などで構成されたテストバッテリーを作成し、124名の保育者に調査を実施した。その結果、自覚症状しらべでは幼稚園教諭と保育士(保母)の疲労の訴え率(有訴率)に有意差が認められず、CFSIでは有意差が認められた。CFSIの結果、幼稚園教諭は保育士(保母)と比較して身体的な不調和傾向や不安感が有意に高く、労働意欲の低下が見られ、慢性的な疲労が強いことが示された。
1-5 ナス栽培における管理、収穫作業の姿勢評価について
○菊池 豊,石川 文武(生物系特定産業技術研究推進機構)
ナス施設栽培における管理、収穫時の作業姿勢を姿勢モニタ及びビデオで記録した。ビデオからOWAS法で姿勢の負担度を分析、評価した。その結果、収穫よりホルモン処理、摘葉作業の方が負担度が高かった。この原因として、生育ステージにもよるが、実(花)の大きさ、着果位置により探しにくいために体幹を曲げたり、ひねったものと推測された。被験者毎には、身長がやや高い被験者は前傾姿勢やしゃがみ姿勢を多めに取っている。やや低い被験者は前傾姿勢が少なく、手を肩より挙げる動作が多く見受けられた。特に男女とも腰高さ以下の実を収穫する場合は、しゃがみ姿勢や跪き姿勢をとることが多い。
1-6 疲労の初期徴候と副次動作の発現 ○川上 剛(労働科学研究所),大西
明宏(日本体育大学),松ケ迫 剛,瀬尾 尚聡(千葉工業大学大学院)
疲労の進行時に軽度疲労の自覚とそれに伴う作業変容がまずおこり、一種の初期警告サインとなって作業適応が変化することが知られている。そこで、被験者にシミュレーションゲームによる一定のタスクを課して、自覚症状、副次動作の記録と筋電図測定を行ない、疲労の初期徴候がどのように発現するかを監察した。被験者によってタスク課題の遂行と疲労に関する自覚・他覚徴候の間の関係には特徴あるパターンが観察された。このパターンを手がかりに作業観測法を構築できよう。
1-7 旧PC98用の実験測定用プログラムの提供−生体電気現象,反応時間,CFF− 大箸
純也(近畿大学九州工学部)
現在はパソコンの進歩が非常に速く、機械の故障の前に使われなくなるものが多くある。これらの使われなくなったコンピュータも、発売当時は実験計測装置として、よく使われていた。実習などで多くの実験を同時に行なうために、実験装置が複数必要なことは多く、これらのコンピュータを複数台用意することは比較的容易である。以上のことから、これらの旧式コンピュータ(NEC
PC98シリーズ互換機)用の実験計測用プログラム(信号波形の表示記録、反応時間測定、CFF測定)を作成して、実習に用いている。特に珍しいプログラムではないが、資源の有効利用のためにも利用して頂ければ(無償)と考えて、報告する。
1-8 幼児の可愛らしさの形態学的研究 ○佐藤
陽彦,宮野 綾子(九州芸術工科大学)
幼児に対する保護行動と感情反応は生得的基盤をもち、幼児の形態的特徴が幼児を可愛く思わせると考えられる。本研究では、幼児の形態的特徴のうち、身体に対する頭の大きさ、頭全体に対する眼の位置、及び四肢の太さ長さに注目して、どのような形態が可愛らしく思われるのかを調査した。満1歳の幼児を基準に、これら3要素の比率を変えた図を各要素につき13図作成し、それを男女各32名の学生に見せて、可愛らしさを判定してもらった。最も多くの人に可愛らしいと判定されたのは、全頭高/身長=0.250、内眼角高/全頭高=0.382、股下高/身長=0.285の図で、男女差、子どもの好き嫌いによる差は認められなかった。
1-9 パソコンソフトの日本語メニューで用いられる用語について ○松延
拓生,吉村 健志,小田 雄一,佐藤 陽彦(九州芸術工科大学)
ここ数年でパソコンが一般家庭にまで普及し、パソコン初心者ユーザーが増加している。本研究ではパソコン利用者が操作する機能とソフトウェア中で使用されているメニューの項目とを対応付けて調査し、パソコン利用者が機能をどのような項目で分類して使用しているかを探り、最終的にはそれらを基にメニューの項目を提案していくことを目的とした。本研究では、ワープロソフトについてアンケート調査を行なった結果得られた、意味の分かりにくい用語(カタカナ用語、専門用語など)についてワープロ専用機の用語などを参考にして用語の検討を行う。
2-1 高齢者を巡るPC環境の現状−生涯学習とPC教室受講者の意識について− ○池上 徹(千葉工業大学大学院),三澤
哲夫(千葉工業大学)
パーソナルコンピュータの低廉化に伴い、わが国でも一般の生活者レベルでインターネット通信などによる情報交換がなされるようになってきた。電脳空間、サイバースペースなどと呼ばれるこれらの環境を使いこなすためには、若い世代はまだしも、アプリケーションの使用法や操作マニュアルなどのソフト面は、中高年齢者にとっては耳慣れない外来語の洪水に苦慮し、こうしたニューメディアへの対応を遅らせる要因となっている。今後、社会的に高齢化が進展する情況の中において、ニューメディア技術を普及し、活用させていくことの意義は大きい。この報告では、特に高齢者、それも積極的にニューメディアと関わっていこうという意欲を持った方々に対して行った意識調査の結果を紹介し、現状での問題点と今後の展望について考察する。
2-2 生活環境に対する高齢者の要求分析とそのパターン化 ○中村 慶,植村
明生(千葉大学大学院),堀田 明裕(千葉大学)
高齢化社会の到来とともにユーザーの生活環境に対する新たな要求が顕在化しつつある。これらの要求は、主に身体的ハンディキャップ者等ユーザーの身体特性、生活行為、生活行為を構成する動作と、これらの動作に対応する設備環境との相互作用の結果生じてくる。これらの関係を65歳以上の高齢者を事例として、入浴行為空間について調査・分析した。更にデザインの方向を検討するために、その結果を動作フローと使用設備が同一の場合、動作フローは異なるが、使用設備が同一の場合に分けて要求をパターン化した。
2-3 障害者用トイレの構造と車椅子使用時の利便性について ○茂木
みどり,池上 徹(千葉工業大学大学院),肝付
邦憲(千葉工業大学)
高齢者と同様、車椅子使用の障害者にとってバリアフリー環境の実現は重要課題となる。本課題は、大学内に設置されている構造の異なる2ヶ所の障害者用トイレで実験を行った。目的は、トイレの構造の違いが車椅子使用時の利便性にどのような影響を及ぼすか、である。被験者は大学生20名で、実験条件は、1)身体に重量負荷をかける、2)身体の動きを拘束する、などであった。これらの条件下で、被験者の行動および所要時間の測定を行った。同時に使いやすさの主観的評価を求めた。この結果、車椅子使用時のトイレの利便性は面積の大小だけでない。ドア、便器、洗面台、手すりなどの器具の配置及び構造が利便性に影響を及ぼすと考えられた。
2-4 車いす利用者のための既存建築物に関する研究−人間工学的アプローチから− ○武田友良(高崎経済大学地域政策研究センター),肝付邦憲,三澤哲夫(千葉工業大学),岸田孝弥(高崎経済大学)
車いす利用者が快適に車いすを使用する環境づくりをめざして人間工学的アプローチにより調査を行った。過去の研究成果や、各都道府県のガイドラインをもとにアクションチェックリストの作成を試みた。それを基に、既存の大規模公共建築物を想定して大学構内の7つの建築物を調査した。行政の立場から多くの役所でバリアフリーのための条例が施行され、りっぱな冊子でガイドラインが示されているのだが、具体的な手順はこれといって見あたらない。本研究は、ILOチェックリストをヒントに、ハートビル法の趣旨を踏まえて既存建築物の改善のためのチェックリストを作成したものである。さらに、今年4月にできた6階建ての講義棟を、このアクションチェックリストと手動車いすを使用して調査してみた。本来ならハートビル法の趣旨を踏まえて「バリアフリー化」「ユニバーサルデザイン化」が進んでいると思われた。しかし実際は、緊急時に脱出できなかったり、教室で授業を受けるのが困難であったり、エレベーターに乗るのがむずかしかったりといったトラブル要因が見受けられた。一見、車いす利用者にやさしいと思われた新しい建築物を、アクションチェックリストで調査することでまだ改善すべき点があることが、わかった。既存建築物改善のためのアクションチェックリストの必要性が確められた。
2-5 生活環境の方向性と利き手による偏側性との関係 ○植村
明生,中村 慶(千葉大学大学院),堀田 明裕(千葉大学)
我々が使用している空間・設備・製品等の生活環境の形態や使い方(機能)は、それぞれ特有の方向性を有している。しかし、人間がこれらの環境を使用する時の方向に対する感覚と、利き手等の身体機能的な方向性とは必ずしも一致しない。本研究では人間と環境との関係で生じる認知的な方向感覚や、機能的な方向判断は学習による慣れと、身体的な要因によって形成されると仮説設定した。この仮説をもとに右利き者を想定した現在の生活環境において、右利き者と異なる身体特性を有する左利き者に注目し、環境に対する方向感覚や身体の偏側性から生じる方向判断の特性を分析した。
2-6 有酸素トレーニングが形態及び脂質代謝に及ぼす影響 ○金 寿男(九州芸術工科大学大学院),佐藤陽彦,菊地和夫(九州芸術工科大学)
本研究では27歳から48歳までの一般健常女性60名を対象に有酸素トレーニングが形態及び脂質代謝に及ぼす影響を検討することを目的とした。トレーニングは50%VO2max強度での自転車エルドメーター運動を1回当たり30〜60分、週3回以上、12週間行った。トレーニング前後に形態測定、MRI法による臍部横断面撮影及び血液検査(脂質代謝関連項目)を行った。本トレーニングの結果、体重では-3.5kg(P<0.002)、体脂肪量は-3.9kg(P<0.001)、また皮下脂肪面積は-34.1cm2(P<0.001)、それぞれ有意な減少が認められた。総コレステロール、LDLでは有意な減少が認められながったが、HDL−コレステロールは19.2mg/dl(P<0.001)、HDL2−コレステロールは32.2mg/dl(P<0.0001)の有意な増加が観察された。VLDLは-43.4
mg/dl(P<0.02)、中性脂肪は-28.1mg/dl(P<0.01)、レプチンで-5.6ng/ml(n=26,P<0.0001)の有意な減少が認められた。従って、本研究で行ったトレーニングは形態及び脂質代謝における改善効果が確認された。
2-7 日常生活における睡眠の観察 ○田中
裕志(九州芸術工科大学大学院),佐藤陽彦
(九州芸術工科大学)
本研究は、日常的な睡眠中の動きをビデオ撮影によって観察することにより体動の様態(頻度や持続時間)と主観的睡眠の質との関係について検討した。就寝時刻、起床時刻は設定せずに日頃の生活通りに過ごした。被験者は1名、1週間分の睡眠を観察した。睡眠中に起こる動きを観察し、大きな姿勢変化、腰の移動、足の移動、その他の動きに分類した。主観的睡眠の質を評価するため、についてはOSA睡眠調査票を使用した。睡眠中の姿勢を4つ(仰臥、右横臥、左横臥、伏臥)に分類したとき、この分類による同一姿勢の持続時間が長いと思われる睡眠は主観的に睡眠の質が良くなかった。少ない姿勢変化が睡眠の質を低下させる可能性があると示唆された。
2-8 大量調理技能学習における作業工程表の役割 ○平山素子,大澤清二(大妻女子大学),松谷由紀子,渋谷久恵(県立紅葉ケ丘高等職業技術校),山本妙子(県立小田原高等職業技術校),新井吾朗,森 和夫(職業能力開発総合大学校)
病院や学校など大量調理を行う現場では、調理員は栄養士から献立と材料の指示を受け、数人で数百食の調理を行う。これは個々の調理員が経験をもとに、自分の行動、時間・物の動きを把握し、作業段取りを行うため、可能となっているといえる。能率的な調理作業には、場所、人、時間の効率的利用と作業の全体的な流れの把握が必要である。このためにはベテラン調理員の経験を客観的に見える形態にした「作業工程表」とその使用が初心者にとって大事な要素となると考えられる。本研究は職業技術校給食調理コースの大量調理実習において、生徒が作成した作業工程表と実習中の生徒の動きとの関わりから、作業工程表の役割と機能を明らかにする。
2-9 安全を学ぶための熟練技能の作法 ○肝付
邦憲(千葉工業大学),池上 徹(千葉工業大学大学院)
伝統的な技能を生業とする熟練技能者の生活においては、怪我や病気は生活の糧を失う意味からも最も忌避される事柄である。実際、熟練技能者の多くは怪我の経験も少なく、大病をしないという。こうした事実の背景には、技能者の仕事と生活との一体性の強さが伺える。技能者が有している技能そのものの中に、技術的な面では作業管理、作業者=生活者としての自己管理の術(すべ)が含まれているように考えられる。本研究では作業(仕事)遂行にあたってのこれらの管理の智慧を「作法」と名付け、その修得の過程や実際の運用状況のモデル化を試みる。その上で振り返って、近現代の工場制労働における安全の概念と比較し、安全を学ぶための作法のあり方を現代に活かす方策を検討する。
2-10トンネル内列車火災における乗務員の防災行動について ○岸田
孝弥(高崎経済大学),池上 徹(千葉工業大学大学院)
近年、鉄道、道路等の交通網の整備に伴い、長大トンネル(青函トンネル、関越トンネル、東京湾横断道路トンネル等)が出現している。また、今後は大規模な大深度地下空間の開発なども計画されているが、いずれも空間資源としての有益性とは裏腹に、建設過程、あるいはその利用の際に、いざ、火災等の災害の発生を想定すると、その閉鎖性の高さから避難・消防活動等の困難が被害の拡大を促進するという膨大なリスクを背負っている。本研究の目的は、災害時における人間行動の分析を通じて、システム的に展開する人的事故原因の連鎖を捉え、災害時のリスクのうち、人的被害を減少させるための方策を提言することにある。今回はその試みとして、旧・国鉄で起きた北陸トンネル列車火災事故を例に、事故分析を行った結果について報告する。
2-11参加型職場改善グループワークによって作られる改善提案の特色 ○小木
和孝,川上 剛(労働科学研究所)
これまで、アジア各国において、地元企業・住民の参加によって労働生活改善を進める参加型職場改善グループワーク手法を応用してきた。職場における対策指向型チェックリスト使用結果を基に、小グループ討論を行なって改善策をまとめ、すぐの実施を図った。その結果、国、職域、参加者の属性による違いは示しながら、一定の広がりを持つ現地実施可能な改善提案が導き出される共通点が見出された。直接の仕事環境と共同生活の場とに共通関心があることから、両面への広い目配りと実効あるシンプル改善を特徴とする。実地研究を重んじる働態視軸につながる展開をみてきたので報告する。